2026年10月も、食品の値上げが相次ぎます。
帝国データバンクが主要食品メーカー195社を対象に調査した結果、2026年10月に値上げが予定されている飲食料品は3,033品目となる見通しです。
消費者として気になるのは「何がどのくらい高くなるのか」ですが、食品メーカーで働いていると、その裏側も気になります。
値上げが決まったら、メーカーの商品価格が自動的に変わるわけではありません。
小売企業との値上げ商談、卸店との価格変更、見積もりの修正、店頭価格の調査など、営業側ではさまざまな対応が発生します。
私は食品メーカーで約7年間営業を経験してきました。
今回は2026年10月の食品値上げについて整理するとともに、実際に値上げが行われるとき食品メーカー営業の現場で何が起きているのかを実体験から紹介します。
※企業やカテゴリー、取引先によって商談方法や対応は異なります。以下の営業現場に関する内容は筆者自身の経験をもとにしています。
2026年10月は食品3,033品目が値上げへ
帝国データバンクの「食品主要195社」価格改定動向調査によると、2026年10月の飲食料品値上げは3,033品目となる見通しです。
9月も4,923品目と大規模な値上げが行われており、2カ月連続で3,000品目を超えるのは約3年ぶりとなります。
さらに2026年1~11月までに判明している値上げは1万9,083品目。
帝国データバンクは、2026年通年では前年の2万609品目を上回るとみています。
値上げ要因では「原材料高」が90.7%と最も高く、物流費や人件費なども価格改定に影響しています。
【参考】帝国データバンク「食品主要195社」価格改定動向調査
食品メーカーでは「値上げを発表して終わり」ではない
ここからは食品メーカー営業として実際に経験してきた話です。
ニュースでは「○月から○商品を値上げ」と発表されます。
しかしメーカー営業の仕事として考えると、むしろそこからが大変です。
価格改定が決まると、通常の商談とは別に値上げについての商談が入ります。
1回の商談で決まる取引先もありますが、複数回の商談が必要になるケースもあります。
値上げ実施のタイミングなども含めて、小売企業と調整していきます。
値上げすると見積もりも変更する
当然ながら、商品の価格が変われば見積もりも変更する必要があります。
しかも対応するのは小売企業だけではありません。
卸店に対する価格も変更する必要があります。
メーカーの商品が消費者の手元に届くまでには、メーカー、卸店、小売企業など複数の企業が関係しています。
そのため価格改定では、それぞれとの調整が必要になります。
普段の商品提案や販売計画に加えてこうした業務が発生するため、営業担当者にとって値上げは大きなイベントの一つです。
値上げ前と値上げ後で店頭価格を調査する
私の場合、値上げの際に重要だった仕事の一つが価格調査です。
値上げ前に商品がいくらで販売されているのかを確認します。
そして価格改定後にも店舗を確認し、実際の売価がどう変わったのかを調査します。
自社商品だけを見るのではありません。
競合商品の価格や特売状況なども確認し、その後の販売施策を考える材料にします。
食品メーカー営業というと商談中心のイメージを持たれやすいですが、実際にはこうした店舗確認やデータ分析もかなり重要です。
食品メーカー営業の普段の仕事内容については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
▶ 食品メーカー営業の1日の流れ|商談・店舗巡回・資料作成のリアル
値上げ商談で特に怖いのが「棚から商品が外れること」
食品メーカー営業として値上げ商談で特に慎重になる理由があります。
商談の進め方によっては、棚割から自社商品がカットされる可能性があるからです。
スーパーやドラッグストアなどの売場には限られたスペースしかありません。
価格が上がることで販売数量の低下が予想されれば、競合商品との比較によって商品の取り扱いが見直される場合もあります。
メーカーとしては価格改定を進める一方で、商品を継続して販売してもらう必要があります。
そのため、値上げ商談は非常に慎重に対応する必要があります。
「値上げを1カ月待ってほしい」と言われることも
値上げのタイミングについても、メーカーの希望通りになるとは限りません。
商談では取引先から、
「値上げを1カ月据え置いてほしい」
といった要望が出ることもあります。
どこまで対応するのかは、業界や企業、取引条件などによって異なります。
一律に「こう対応する」というものではありません。
メーカー側は自社の方針と取引先との関係を踏まえて調整することになります。
卸店側から「値入れ改善」の話が出ることもある
さらにメーカーと小売企業だけの話ではありません。
卸店側から、このタイミングで値入れ改善などの話が出てくる場合もあります。
メーカーの商品価格が動くタイミングだからこそ、流通の途中にある取引条件についても話し合いが行われることがあります。
つまりメーカー営業からすると、値上げは単純に商品の価格を変更する作業ではありません。
メーカー・卸店・小売企業それぞれとの条件を調整する仕事でもあります。
値上げすると販売数量はどうなる?
消費者としても気になるのが「値上げした商品は売れなくなるのか?」という点だと思います。
私が実際に営業をしてきた感覚では、値上げ後は販売数量が落ちる商品が多いです。
価格が高くなれば購入を控える人が出てくるため、これは自然な動きだと思います。
ただし、販売数量が減ったからといって、必ずしも売上金額まで同じ割合で落ちるわけではありません。
商品の単価自体が上がっているため、
「数量は減ったものの、売上金額は値上げ前と大きく変わらない」
というケースもあります。
「値上げしても売れる商品」と「売れなくなる商品」がある
ここが食品メーカーとして非常に難しいところです。
同じように価格を上げても、その後の動きは商品によって違います。
価格が上がっても継続して購入される商品もあれば、価格上昇をきっかけに販売数量が大きく落ちる商品もあります。
ブランド力、競合商品の有無、カテゴリー、価格帯などさまざまな要素が関係するため、単純に「○%値上げしたから○%売れなくなる」とは言えません。
だからこそ、メーカー側は値上げ後のPOSデータや店頭の状況を確認する必要があります。
値上げ後こそ「特売」を増やす商品もある
少し意外かもしれませんが、通常価格を値上げした後に、特売などによる露出を増やす必要がある商品もあります。
価格が上がった結果、消費者が商品を手に取る機会そのものが減ってしまう場合があるからです。
そこで特売を実施し、店頭での露出や購入機会を増やすことで販売数量を補います。
値上げ後の商品がどの程度売れているのかを確認し、必要であれば販促を強化する。
価格を変更した後の立て直しまで含めてメーカー営業の仕事だと私は感じています。
食品メーカー営業は数字を見る仕事でもある
こうした価格改定への対応では、営業担当者もさまざまな数字を確認します。
私自身もPOSデータが取得できる取引先では、商品の販売実績を分析していました。
市場データなども使いながら、
- 値上げ後に販売数量がどの程度変わったか
- 売上金額はどうなったか
- 競合商品はどう動いているか
- 特売などの販促が必要か
といった点を確認します。
その結果を次回の商談資料や販売施策に反映していきます。
食品メーカー営業は「商品を売り込む仕事」というイメージがありますが、実際にはデータ分析・資料作成・社内外の調整に使う時間もかなり多い仕事です。
値上げニュースを見る目が食品メーカーに入って変わった
食品メーカーで働く前なら、値上げのニュースを見ても「また高くなるのか」と消費者側から考えるだけだったと思います。
しかし実際にメーカー側で仕事をすると、一つの商品価格を変えるだけでも多くの調整が必要だと分かります。
値上げ商談をする。
見積もりを変更する。
卸店とも調整する。
値上げ前後の店頭価格を調査する。
販売数量を確認する。
必要なら特売などの販売施策を考える。
ニュースでは「○月から値上げ」という一文ですが、その裏ではメーカー、小売企業、卸店など多くの担当者が動いています。
食品メーカーの仕事が気になる方へ
食品メーカー営業は値上げ対応だけでなく、普段から商談、店舗巡回、見積もり作成、POS分析、商談資料作成などさまざまな業務があります。
実際に7年間働いて感じた仕事内容はこちらでまとめています。
▶ 食品メーカー営業はきつい?7年間働いて感じた仕事内容・メリット・大変なこと
年収や食品メーカー各社について知りたい方はこちらです。
まとめ|食品値上げの裏では営業の商談も増える
2026年10月は3,033品目の飲食料品が値上げされる見通しです。
消費者にとっては家計への影響が気になるニュースですが、メーカー側でも値上げに伴って多くの業務が発生します。
私自身の経験では、値上げ商談、見積もり変更、卸店との調整、値上げ前後の価格調査などが必要になります。
さらに商談の進め方によっては棚割から商品が外れる可能性もあるため、営業担当者としては慎重な対応が必要です。
そして値上げ後も終わりではありません。
販売数量や売上を確認し、商品によっては特売を増やして露出を確保するなど、その後の販売施策まで考えます。
「食品3,033品目値上げ」という数字の裏側では、こうしたメーカー・卸店・小売企業の調整が行われています。
食品メーカーで働く立場として、今後もニュースだけでは分かりにくい食品業界の現場について紹介していきたいと思います。
※値上げ品目数などの情報は2026年9月時点の帝国データバンク公表資料を参照しています。営業現場についての記述は筆者自身の経験に基づくもので、企業・業界・取引先によって異なります。


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