食品メーカーでは商品の値上げが決まると、営業担当者の仕事も一気に増えます。
ニュースでは「○月から価格改定」と発表されますが、実際の営業現場では、発表して終わりではありません。
小売企業との値上げ商談、卸店との調整、見積もり変更、値上げ前後の店頭価格調査など、さまざまな対応が必要になります。
私は食品メーカーで約7年間営業を経験し、小売企業や卸店との商談、店舗巡回、POS分析、見積もり作成などを担当してきました。
この記事では、実際に経験した「食品メーカーの値上げ商談」の流れと、営業担当者が何をしているのかを紹介します。
※本記事は筆者自身の営業経験をもとにしています。値上げ時の対応や取引条件はメーカー・卸店・小売企業・商品カテゴリーなどによって異なります。
- 食品メーカーの値上げ商談とは?
- 値上げが決まると営業の仕事はどのくらい増える?
- 値上げは小売企業だけと商談すればいいわけではない
- 値上げ商談で「1カ月据え置いてほしい」と言われることもある
- 値上げのタイミングで卸店から条件の話が出る場合もある
- 値上げ商談で怖いのが「棚割から商品が外れること」
- だから値上げ商談は慎重になる
- 値上げ前後には店頭の「売価調査」をする
- 値上げすると販売数量は落ちる?
- 「値上げしても買われる商品」と「買われなくなる商品」がある
- 値上げした後に「特売」を増やすこともある
- 食品メーカー営業は「売る」だけではない
- 値上げニュースを見ると営業側の仕事まで気になるようになった
- 2026年10月も食品値上げが相次ぐ
- まとめ|食品メーカーの値上げ商談は価格を伝えるだけではない
食品メーカーの値上げ商談とは?
食品メーカーが商品価格を改定するとき、営業担当者は担当している取引先と値上げについて商談します。
通常の商品提案とは別に値上げに関する商談が追加されるイメージです。
私の経験では、1回の商談で話がまとまる取引先もあれば、複数回の商談が必要になる取引先もありました。
特に重要になるのが、「いつから新しい条件に切り替えるのか」というタイミングです。
メーカーとして価格改定時期が決まっていても、実際の取引では取引先との調整が必要になります。
値上げが決まると営業の仕事はどのくらい増える?
「値上げで営業の仕事が何時間増える」と数字で表すのは難しいです。
ただ、通常業務に加えて値上げ関連の仕事が発生するため、対応する業務は確実に増えます。
私が経験した主な業務は次のようなものです。
- 小売企業との値上げ商談
- 卸店との価格変更に関する調整
- 見積もりの変更
- 値上げ前の店頭価格調査
- 値上げ後の店頭価格調査
- 値上げ後の販売実績確認
- 必要に応じた販売施策の検討
これらを通常の商談、店舗巡回、資料作成などと並行して進めます。
普段の食品メーカー営業の1日については、こちらで詳しく紹介しています。
▶ 食品メーカー営業の1日の流れ|商談・店舗巡回・資料作成のリアル
値上げは小売企業だけと商談すればいいわけではない
食品メーカーの流通では、メーカーから直接小売企業へ商品を販売するケースだけではなく、卸店が間に入ることがあります。
そのため値上げが決まると、小売企業だけではなく卸店側の価格についても変更が必要になる場合があります。
当然、見積もりも新しい条件に変更します。
メーカーからすると、一つの商品を値上げするだけでも複数の取引先・流通段階で調整が発生するわけです。
値上げ商談そのものだけでなく、こうした事務作業も営業担当者の仕事になります。
値上げ商談で「1カ月据え置いてほしい」と言われることもある
メーカー側が希望するタイミングで、すべての取引先が同じように条件を変更するとは限りません。
私自身の経験でも、
「値上げを1カ月据え置いてほしい」
といった要望が出ることがありました。
こうした要望にどのように対応するのかは、企業や業界、商品、取引条件などによって異なります。
営業担当者だけで判断できない場合には、社内で確認・調整しながら商談を進めることになります。
値上げのタイミングで卸店から条件の話が出る場合もある
もう一つ、メーカー営業として経験したのが卸店との条件調整です。
商品価格が変更されるタイミングで、卸店側から値入れ改善などについて話が出ることもあります。
メーカーとしては商品の価格改定だけを考えればよいわけではなく、流通全体を見ながら対応する必要があります。
このあたりは、食品メーカー営業を実際に経験するまで私自身もあまり意識していなかった部分です。
値上げ商談で怖いのが「棚割から商品が外れること」
私が値上げ商談で特に慎重に対応していた理由があります。
商談の結果によっては、自社商品が棚割から外れる可能性があるからです。
スーパーやドラッグストアの売場スペースには限りがあります。
似たような商品が複数ある場合、小売側も売上や利益、販売数量などさまざまな要素を考えて商品を選びます。
価格改定によって競合商品との価格差が変われば、商品の採用や売場にも影響する可能性があります。
営業担当者としては「値上げを伝えれば終わり」ではなく、商品の価値や販売実績なども含めて商談する必要があります。
だから値上げ商談は慎重になる
商品の取り扱いがなくなれば、その取引先での売上に直接影響します。
特に売上規模の大きい企業で商品が外れれば、メーカー側への影響も大きくなります。
そのため私は、値上げ商談は通常の商品提案以上に慎重に進める必要があると感じていました。
ただ価格変更を伝えるのではなく、
- これまでの販売実績
- 商品の特徴
- カテゴリー内での役割
- 今後の販売施策
なども含めて、継続して取り扱ってもらえるように考えます。
値上げ前後には店頭の「売価調査」をする
値上げ時に私が行っていた重要な仕事の一つが、店頭での価格調査です。
まず値上げ前に店舗を回り、自社商品が実際にいくらで販売されているのか確認します。
そして値上げ後にも再び店舗を確認します。
「値上げ前はいくらだったのか」「価格改定後に店頭価格がどう変化したのか」を確認するわけです。
同時に競合商品の価格や特売状況、売場での陳列方法なども見ます。
なお、メーカーによる店頭価格の調査と、小売店の販売価格を拘束することは別の話です。
販売価格は小売企業側が決定するものであり、メーカー営業としては市場や売場の状況を把握するために調査します。
値上げすると販売数量は落ちる?
私がこれまで見てきた範囲では、値上げ後に販売数量が落ちる商品は多いと感じています。
価格が上がれば、それまで購入していた人の一部が購入頻度を下げたり、別の商品を選んだりすることがあります。
ただし、ここで面白いのが「数量」と「売上金額」は別だということです。
販売数量が落ちても商品単価は上がっています。
そのため、
販売数量は減ったものの、売上金額では値上げ前とほぼ変わらない
というケースもあります。
「値上げしても買われる商品」と「買われなくなる商品」がある
値上げ後の売れ方は、すべての商品で同じではありません。
私の経験では、大きく見ると、
- 価格が上がっても比較的買われ続ける商品
- 値上げをきっかけに販売数量が大きく落ちる商品
があります。
その違いを見ることも、メーカー営業にとって重要です。
POSデータが取得できる取引先では、値上げ後の販売数量や売上金額を確認します。
市場データなども使いながら競合商品の動きも確認し、その後の販売施策を考えます。
値上げした後に「特売」を増やすこともある
通常価格を値上げしたのに、その後に特売を増やす。
一見すると不思議に感じるかもしれません。
しかし商品によっては、値上げによって販売数量が落ちた後、特売の頻度を増やして店頭での露出や購入機会を作る必要があります。
もちろん、すべての商品で行うわけではありません。
値上げ後も問題なく売れる商品もあれば、販売数量が大きく落ちてテコ入れが必要になる商品もあります。
価格改定後のPOSデータなどを確認しながら、商品ごとに販売方法を考えていきます。
食品メーカー営業は「売る」だけではない
値上げ商談を経験すると、食品メーカー営業は単純に商品を売り込む仕事ではないと改めて感じます。
実際には、
- 商談
- 価格や販売実績の分析
- 店舗巡回
- 見積もり作成
- 商談資料作成
- 卸店との調整
- 社内調整
など、かなり幅広い仕事があります。
食品メーカー営業を7年間経験して感じた仕事内容や大変な部分については、こちらでもまとめています。
▶ 食品メーカー営業はきつい?7年間働いて感じた仕事内容・メリット・大変なこと
値上げニュースを見ると営業側の仕事まで気になるようになった
食品メーカーで働くようになってから、値上げニュースを見る感覚も変わりました。
消費者としては「また値段が上がるのか」と感じるニュースですが、メーカー側ではその前後で多くの人が動いています。
営業担当者だけでも、商談、見積もり変更、卸店との調整、店頭価格調査、値上げ後の販売分析などがあります。
ニュースに出る「○月から価格改定」という短い発表の裏側には、こうした仕事があります。
2026年10月も食品値上げが相次ぐ
2026年10月も多くの食品で価格改定が行われています。
今回の記事では値上げ商談そのものに焦点を当てましたが、2026年10月の食品値上げについてはこちらの記事でまとめています。
▶ 2026年10月の食品値上げ|食品メーカー営業から見た値上げの裏側
まとめ|食品メーカーの値上げ商談は価格を伝えるだけではない
食品メーカーで商品の値上げが決まると、営業担当者には通常業務に加えてさまざまな仕事が発生します。
私が実際に経験した範囲でも、小売企業との値上げ商談、卸店との調整、見積もり変更、値上げ前後の店頭価格調査などがありました。
さらに商談の結果によっては棚割から商品が外れ、売上に影響する可能性もあります。
そのため、値上げ商談は慎重に対応する必要があります。
そして値上げが実施された後も終わりではありません。
販売数量や売上金額を確認し、必要な商品については特売などで露出を増やすこともあります。
「値上げを伝える→実施する→売れ方を確認する→必要なら販売施策を考える」までが一連の仕事です。
食品メーカーへの就職・転職を考えている方にとって、こうした仕事内容も業界を知る一つの材料になればと思います。
※本記事の営業現場に関する記述は筆者自身の経験に基づいています。実際の商談・価格改定方法は企業、商品、取引形態などによって異なります。


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