日米関税合意に基づく対米投融資の「第3弾」をめぐり、次世代原発と呼ばれる小型モジュール炉(SMR)の建設が有力候補になったと報じられました。
米国ではAIデータセンターの拡大によって大量の電力が必要になると見込まれており、電力インフラの整備を急ぐ狙いがあります。
一方、日本側には原発技術の知見獲得や日本企業の受注機会が期待されるものの、採算性や事故時の責任、融資リスクなどの課題も残っています。
- 対米投融資第3弾ではSMR建設の拡大が有力と報道
- 従来型の大型原発も候補に挙がっている
- 背景にはAIデータセンターによる電力需要の増加がある
- 日本企業の機器供給や技術獲得につながる可能性がある
- 2026年9月13日時点では第3弾の正式決定ではない
対米投資第3弾でSMR建設が有力候補に
2026年9月12日の共同通信の報道によると、総額5,500億ドル規模の対米投融資計画の第3弾として、米国内でのSMR建設が有力になっています。
SMRだけでなく、従来型の大型原子炉も候補に挙がっていると報じられました。
ただし、政府から第3弾の案件、投資額、建設場所、参加企業が正式発表されたわけではありません。現時点では「有力候補」として検討されている段階です。
「対米投資第3弾が決定した」「日本が新たに具体的な金額を支払うことが決まった」という状況ではありません。今後の政府発表を確認する必要があります。
対米投融資5,500億ドルとは?
この対米投融資は、2025年の日米関税合意を受けて設けられた「戦略的投資イニシアティブ」に基づくものです。
規模は最大5,500億ドルで、円換算額は為替によって変動します。今回の報道では約84兆円とされています。
ただし、5,500億ドル全額を日本政府が一括で米国へ支払うという意味ではありません。
政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)による融資や出資、日本貿易保険(NEXI)による融資保険などを活用し、対象事業を個別に審査しながら投融資を進める枠組みです。
SMRとはどのような原発?
SMRは「Small Modular Reactor」の略で、日本語では小型モジュール炉と呼ばれます。
共同通信の報道では、一般的な大型原発の出力が100万kW程度なのに対し、SMRは30万kW以下とされています。
大型原発より設備を小型化し、工場で製造したモジュールを建設場所で組み立てることで、建設期間や費用を抑えることが期待されています。
安全性を高めやすいとされる一方、実際の建設費や運転コスト、使用済み核燃料の処理、事故発生時の責任分担など、事業化に向けた課題もあります。
なぜ米国は次世代原発を必要としている?
AIデータセンターの電力需要が増えている
生成AIの普及に伴い、米国ではデータセンターの建設が進んでいます。AI向けデータセンターは、大量の半導体を稼働させるために安定した電力を必要とします。
天候によって発電量が変わる電源だけでは電力を安定的に確保することが難しいため、原子力や天然ガス発電などを組み合わせる動きが強まっています。
中国とのAI開発競争
米国は中国とのAIや半導体をめぐる競争を背景に、国内のデータセンターと電力インフラを強化しようとしています。
今回のSMR計画も、単なる発電所建設ではなく、AI産業を支える経済安全保障上の事業という位置付けが強いと考えられます。
第1弾と第2弾では何が決まった?
第1弾は天然ガス発電など3事業
2026年2月に発表された第1陣では、次の3つのプロジェクトを日米で進める方針が示されました。
- 工業用人工ダイヤモンドの製造
- 米国産原油の輸出インフラ整備
- AIデータセンターなどへ電力を供給する天然ガス発電
第1陣の事業規模は、合計で約360億ドルとされています。
第2弾にはSMR建設がすでに含まれている
2026年3月の日米首脳会談では、第2陣の投資プロジェクトとしてSMR建設を含む3事業が発表されました。
- テネシー州・アラバマ州でのSMR建設
- ペンシルベニア州での天然ガス発電施設
- テキサス州での天然ガス発電施設
今回報じられた第3弾は、すでに第2弾へ盛り込まれたSMR計画を、さらに拡大する内容になる可能性があります。
日本側に期待されるメリット
日本企業の受注機会
原発建設には、原子炉だけでなくタービン、発電機、制御システム、配管、素材、保守設備など幅広い製品が必要です。
日本企業が関連機器や部品の供給に参加できれば、大手メーカーだけでなく、部品を製造する中小企業にも受注機会が生まれる可能性があります。
次世代原発の知見を得られる
米国のSMRプロジェクトへ日本企業が参加すれば、設計、建設、運転、保守に関する最新の知見を蓄積できる可能性があります。
将来、日本国内や第三国でSMRを導入する場合にも、米国事業への参加経験が生かされるかもしれません。
エネルギー安全保障の強化
日米で原発技術や重要部品のサプライチェーンを構築することは、特定国への依存を抑えることにもつながります。
対米投資第3弾に残る課題
採算が取れるのか
SMRは大型原発より建設費を抑えやすいとされていますが、建設実績がまだ少なく、実際のコストが当初計画を上回る可能性があります。
完成の遅れや事業費の増加が起きた場合、融資を行う金融機関や参加企業にも影響が及びます。
事故時の責任分担
原発事業では、大事故が起きた場合の損害賠償や責任の範囲を事前に明確にする必要があります。
日本側がどの範囲までリスクを負うのかは、今後の契約条件を判断する重要なポイントです。
日本の利益につながるか
米国内で雇用や設備投資が増えても、日本企業の受注や利益が限定的であれば、日本側のメリットは小さくなります。
日本企業の参加比率、機器の調達先、投融資の利率、利益の分配方法などを確認する必要があります。
日本株への影響は?
第3弾が正式決定し、日本企業の参加が発表された場合、原発設備、重電、タービン、制御機器、特殊素材などに関連する企業が注目される可能性があります。
ただし、テーマへの期待だけで株価が先に上昇し、正式な受注額や利益への貢献が見合わない場合もあります。
投資先を判断する際は「SMR関連」という名称だけではなく、実際の受注内容、契約金額、利益率、事業リスクを確認することが大切です。
今後確認したいポイント
- 第3弾が日米両政府から正式発表されるか
- SMRの建設基数と建設予定地
- プロジェクト全体の投資額
- 参加する日本企業と担当分野
- JBICや民間銀行による融資条件
- 事故や事業中止時の責任分担
- 日本企業へ還元される受注額や利益
まとめ
対米投融資第3弾では、AIデータセンターの電力需要に対応するため、米国内でのSMR建設拡大が有力候補として報じられました。
日本にとっては、原発関連企業の受注や技術獲得、エネルギー安全保障の強化につながる可能性があります。
一方で、採算性や事故時の責任、融資リスク、日本側へどの程度の利益が還元されるかはまだ明確ではありません。
2026年9月13日時点では正式決定ではないため、投資額や参加企業については、今後の日米両政府による発表を確認する必要があります。
※本記事は2026年9月13日時点の政府公表資料および報道を基に作成しています。第3弾の案件は正式決定前であり、内容が変更される可能性があります。本記事は特定の株式や金融商品の売買を推奨するものではありません。


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